福祉の枠を超え、社会課題を解決するソーシャルプラットフォーム企業へ。
株式会社マルク
代表取締役社長 北野 順哉
愛媛県松山市出身。松山大学を卒業後、流通企業や広告代理店でキャリアを積む。2013年、兄が代表を務める、まるく株式会社(現:株式会社マルク)に入社。2015年、同社代表取締役社長に就任。「福祉事業所から社会企業への成長」というビジョンを掲げ、当時愛媛県内で3か所の福祉事業所を運営していた同社を就任からわずか4年で株式上場へと導く。現在は全国20か所の事業所を運営するとともに、サブスクリプション型の療育事業やオンライン研修事業を展開し、既存の福祉制度の枠にとらわれない新たなビジネスモデルの構築を推進。2023年にはプロバスケットボールチーム「愛媛オレンジバイキングス」を運営する株式会社エヒメスポーツエンターテイメントの代表取締役社長に就任し、スポーツ経営を通じた地域活性化にも取り組んでいる。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
多様なサービスで、障がいのある方の自立と就労を支援。
私たちマルクは、障がいのある方の社会的自立や就労を支援する「障がい福祉サービス」を提供する企業です。障がいのある方々が自分らしく暮らし、学び、働くことができるよう、さまざまなサポートを行っています。
まず、「就労継続支援事業」では、すぐに一般企業で働くことが難しい方々に対し、継続的に働ける場を提供しています。
就労継続支援にはA型とB型の2種類があり、A型事業所は利用者と事業所が雇用契約を結び、給与を支払いながら仕事の場を提供します。一方、B型事業所は雇用契約を結ばず、利用者に自身のペースで作業や訓練に参加してもらい、その成果に応じた工賃を支払います。
マルクが運営しているのはA型であり、2006年に愛媛県では初めてとなる障がい者就労継続支援A型事業所を開所しました。
利用者の方々に軽作業や事務作業などに取り組んでもらうとともに、職業指導員や支援員が付いて職場でのコミュニケーション能力の向上や作業スキルの習得をサポートしています。事業所で力をつけた方々が、将来的には一般企業へ就職して巣立っていけるよう、しっかりと寄り添っています。
また、「放課後等デイサービス事業」として、障がいのあるお子さんを放課後や長期休暇中にお預かりし、療育を行う事業所を運営しています。
小学生から高校生までを対象に、単に放課後の居場所を提供するだけでなく、遊びや活動を通じて将来の社会生活や就労に必要な力を楽しみながら身につけられるよう支援しています。
そのほか、一般企業への就職を目指す方を対象に、働くために必要な知識やスキルを身につけるための実践的なトレーニングを提供する「就労移行支援事業」、日常生活能力を高めたい方を対象とした「自立訓練(生活訓練)事業」、障がいのある方や保護者からの相談に応じて情報提供などの支援を行う「相談支援事業」など、多角的な支援サービスを提供しています。
一人ひとりの強みや課題に寄り添ったサポートを提供。
マルクが提供する障がい福祉サービスの強みは、大きく分けて三つあります。第一に、多様なニーズに対応できる包括的な体制を整えている点が挙げられます。マルクでは小さなお子さんから大人の方まで、年齢や障がいの種別を問わず支援できる事業所をグループ内に揃えています。
放課後等デイサービスや自立訓練は将来就労を目指す前段階の支援であり、就労移行支援は「これから就職したい方」のため、就労継続支援A型は「まだ一般企業での雇用が困難だが、雇用契約に基づいて働きたい方」のため、というようにライフステージや特性に応じた受け皿を用意しています。
第二に、就職率の高さです。事業所内で定期的に勉強会を開き、履歴書の書き方の指導や自己分析のサポート、VR技術を活用した模擬面接訓練などを実施しているのですが、こうした本格的な就労準備サポートによって一人ひとりの強みや自信を引き出すことが、高い就職率につながると考えています。
そして第三の強みは、就職後の支援が充実していることです。新しい環境に適応することは、誰にとっても簡単なことではありません。ましてや障がいのある方は、職場での意思疎通に対する不安を抱えていることも多く、思わぬ困難に直面することがあります。
そこで当社では、「就労定着支援事業」という形で、就職後も継続してフォローを行っています。就職した方から定期的に近況や悩みをヒアリングし、必要に応じて勤務先の企業とも連携しながら問題の解決にあたっています。
複数のサービスを組み合わせることで、たとえば高校卒業後すぐに一般就労が難しい方でも、「一旦A型事業所で働きながら力をつけ、半年後に移行支援へ通って改めて就職活動に挑戦する」といった柔軟な支援計画を立てることも可能です。
ワンストップで多様なサービスを提供できることは利用いただく方の安心感につながりますし、私たちにとっても長いスパンで成長を見守れる、というやりがいにつながっています。
既成概念にとらわれない、福祉サービスの新たな挑戦。
マルクならではの独自性のある支援サービスや新規事業にも触れておきたいと思います。私たちは常に「福祉の既成概念にとらわれない」チャレンジを大事にしてきました。
例えば放課後等デイサービスの現場では、全国的にも珍しいプログラミング教育を取り入れ、パソコンでゲームを作りながら論理的思考力や問題解決力を養うカリキュラムを提供しています。
将来、IT分野でも活躍できるスキルを身につけてほしいという想いから始めた試みですが、子ども達にとっても新鮮で楽しいようで、集中力や意欲の向上といった療育面での効果も感じています。
また、障がいのあるお子さんだけでeスポーツチームを結成したことも話題になりました。ゲーム競技を通じて仲間と協力し合う中で、コミュニケーションが苦手だった子が自分から声を出すようになったり、みんなで勝敗の喜びや悔しさを共有したりと、大きな成長が見られました。
eスポーツには、障がいの有無に関係なく同じフィールドで競い合えるという利点があるため、「障がいを理由に部活動を諦めていた子どもにも、青春のような経験をしてほしい」という願いを込めて取り組みました。
加えて、福祉事業に必要な資格であるサービス管理責任者の研修をオンラインで受講できる「福祉研修アカデミー」を開始したほか、今後はAIを活用した障がい者雇用のマッチングプラットフォームの構築も検討しています。
このように、新たな取り組みに積極的に挑める姿勢はマルクの社風を象徴するものであり、大きな強みであると感じています。
2019年に株式上場を果たし、社会的な信頼を得ることができましたが、それに甘んじることなく、これからもベンチャーマインドを持ち続け、新たなビジネスに次々と挑戦していきたいと考えています。
あらゆる社会課題の凸凹を「まるく」していく。
私が代表に就任した2015年、マルクは10年間のビジョンとして「福祉事業所から社会企業への成長」という目標を掲げました。当時、私たちは愛媛県内に三つの事業所を持ち、毎年10名ほどの就労を支援していました。
それは国内トップクラスの実績でしたが、「働きたいけど働けない」障がいのある方は厚労省のデータによると全国で350万人おり、このペースでは目標達成に35万年かかってしまう計算でした。
この現実を前に、私たちは単に支援を提供する「福祉事業所」に留まるのではなく、社会から必要とされる「社会企業」へと成長し、もっと大きなインパクトを生み出していく必要があると考えたのです。先ほどお伝えした上場も、そうした背景の中にありました。
そして今、次の10年を見据え、私たちは「社会企業からソーシャルプラットフォームへ」という新たな進化を目指しています。上場を経て、多くの仲間やステークホルダーに恵まれた今、私たちが取り組むべきは障がい者福祉の領域だけにとどまりません。
福祉事業を軸としながらも、世の中にあるさまざまな社会課題を解決する事業を生み出し、社会の凸凹を「まるく」していく。それが、ソーシャルプラットフォームという構想であり、これからのマルクの姿だと考えています。
この進化は外部環境の変化に柔軟に対応し、持続的に成長していくためにも不可欠な戦略だと考えています。
多彩なキャリアと情熱が、社会課題を解決に導く。
新たな進化を目指す私たちが今、最も求めているもの。それは言うまでもなく、ビジョンの実現に向かって共に歩んでいただける仲間です。事業が拡大し、新たな挑戦を続ける中で、福祉の枠にとらわれず革新的なビジネスを生み出せる多様な経験を持つ方の協力が必要不可欠です。
私自身も広告代理店出身ですが、異業種での経験がこの業界に新しい視点や発想をもたらすことを、身をもって実感しています。
都市部でキャリアを積まれている方の中には、久しぶりに地元に帰省した際、かつて賑わっていた商店街がシャッター通りと化している光景に心を痛めたご経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
もし、愛媛にご縁があるならば、この町を元気にするために、これまで培ってきた経験やスキルを愛媛の地で活かすという選択肢を考えてほしいです。
福祉などの知識は入社してからでも十分に学べます。それ以上に、社会課題を自分事として捉え、解決のために情熱を注げるかどうかが何より大切です。
私たちの理念に共感し、「社会をより良くしていきたい」という強い意志をお持ちの方であれば、培ってこられた経験は間違いなく、マルクにとって、そして社会にとって大きな力になるはずです。
ぜひ、私たちと一緒に「世の中のさまざまな社会課題を解決する」という、壮大なゴールを目指しませんか。情熱溢れる仲間に出会えることを、心から楽しみにしています。